福岡県筑後地方、ゆったりと流れる九州地区最大の河川“筑後川”と、その流域に広がる穀倉地に豊かな実りに恩恵を受け、昔から酒造りと共に時を刻んできたこの地で、今も酒造りが行われています。
酒粕焼酎の製造を始め、その後、その他の原料を使用した焼酎、そして日本酒の製造を始めました。1920年に水質が良く、水量が豊富な現在地へ移転。1952年に森永酒造株式会社を設立。その後、1992年に株式会社 杜の蔵に社名を変更しました。そして2005年に九州でいち早く「全量純米酒蔵」に切り替えたことでも有名です。これは「純米酒」以外を否定するわけではありません。我々が純米酒に情熱を注ぐのには理由があります。日本酒の伝統、醸造酒として本来あるべき姿を考え、米と水だけで醸す純粋なお酒ならではの旨みと個性の豊かさ。幅広い食とともに楽しめる味わいと 酔いざめの良さ。そして何より、造り手である“私たちが飲みたいお酒”それが純米酒なのです。また、酒づくりにあたる末永杜氏は約100年以上の間、親子4代にわたって三潴杜氏の技術を受け継いできました。この“蔵元”と“杜氏”の信頼関係もひとつの誇りだと5代目蔵元の森永一弘さんは語ります。
杜の蔵で私用する米は糸島産「山田錦」と三潴産「夢一献」の2品種。いずれも福岡県内で契約栽培をしている酒米です。契約圃場に足を運び、農家のみなさまとコミュニケーションをとりながら、自社田での試験栽培にも取り組み、栽培法や酒質との関連性も研究しています。
主力銘柄である「独楽蔵」は1994年に誕生。そして「杜の蔵」は2010年に誕生しました。それぞれコンセプトがはっきりとわかれています。「杜の蔵」は透明感がありシンプルでわかりやすく、10人の方が飲まれたら7~8人は一定の評価と感想を得られるようなお酒です。
それに対し「独楽蔵」は説明と時間が必要なお酒です。ゆっくりじっくりと大切に時を重ねた“熟成酒”がメインとなっており、一口目では10人中2~3人しか評価を得られないお酒かもしれません。しかし、ひとたび“熟成酒”の魅力に目覚めると、もう普通のお酒では満足できなくなってしまうかも・・・もちろん我々もそんな一人です。